多田羅迪夫紹介ブログ

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オペラ羅針盤1 公演回顧

写真=2004年7月25日

第85回:東京室内歌劇場 

リヒャルト・シュトラウスインテルメッツォ》公演

会場 新国立劇場中劇場

演出:鈴木敬介 指揮:若杉弘

管弦楽:東京交響楽団 ロベルト・シュトルヒ:多田羅迪夫

撮影:竹原伸治

私のプロフィール写真を含め、沢山の舞台写真を撮ってくださったカメラマンの竹原伸治氏。

2019年1月に84歳で逝去されましたが、懐かしい写真です。

指揮の若杉弘さんの柿の木坂のお宅へ稽古に通った日々が思い出されます。

エッセイ オペラ羅針盤1 (再掲載)

私の声種はバスバリトン。『カルメン』の闘牛士エスカミーリョやドン・ジョヴァンニのような色男役もありますが、オペラの中では、主に血気に逸る若者を諫める賢者、恋敵、悪役など一筋縄ではゆかない陰翳深い役を担当します。

私がドイツの歌劇場の専属歌手を経て帰国し、83年に二期会オペラで最初に歌ったのは、ワーグナージークフリート』アルベリッヒでした。 地底に住むニーベルンゲン族の主で権力の指環を手に入れる激しい役です。弟ミーメ役にベルリン・ドイツオペラでも活躍したホルスト・ヒースターマンも招聘された密度の濃いプロダクションが話題となり、翌年には故朝比奈隆指揮『ラインの黄金』アルベリヒや『神々の黄昏』でも悪役のハーゲンに出演。小澤征爾指揮『ヴォツェック』では、精神異常をきたし殺人を犯すヴォツェック役、故若杉弘さんの指揮では、ヴォツェックに人体実験をする医師役を歌いました。その間、ポーランドで『袈裟と盛遠』の盛遠、フィンランドで『お蝶夫人』の領事シャープレスなども歌いましたが、当初は強烈な性格俳優の印象が強かったかもしれません。

マイク無しの生声で歌うオペラには、強大な音量のオーケストラを突き抜ける鍛錬した声が必要です。92年小澤征爾指揮『エディプス王』で共演したソプラノのジェシー・ノーマンの声は、それまでに経験したことのない超弩級の声でした。あの立派な体躯から発せられる豊かな声を聞くと、天賦の才とはいえ、人間の声の限界を忘れさせてしまうものです。しかし、大多数のオペラ歌手の声は、長い忍耐の時間をかけて広い音域とムラのない共鳴を訓練によって獲得するのです。

これから私のオペラの経験をもとに、オペラについての様々なお話しをすることにしましょう。